「昨年、仮想通貨(暗号資産)で利益が出たけど、確定申告ってどうすればいいんだろう?」
2024年は、暗号資産市場が再び活況を呈し、多くの方が利益を得た一方で、確定申告という壁に直面しているのではないでしょうか。暗号資産の税金は複雑で分かりにくいと感じる方も多いかもしれませんが、しっかりと理解し、適切な手続きを行うことが重要です。なぜなら、誤った申告や無申告は、追徴課税や加算税といったペナルティにつながる可能性があるからです。
この記事では、2025年の確定申告に向けて、暗号資産の税金に関する注意点と対策を徹底的に解説します。初心者の方にも分かりやすいように、基本的な知識から具体的な計算方法、そして申告時の落とし穴まで、詳しく解説していきますので、ぜひ最後までお読みいただき、スムーズな確定申告にお役立てください。
なぜ暗号資産の確定申告が必要なのか?
日本では、暗号資産の取引で得た利益は、原則として所得税の課税対象となります。これは、株式やFXなどの金融商品と同様の扱いです。利益が出たにもかかわらず確定申告を行わない場合、税務署から指摘を受け、本来納めるべき税金に加えて、延滞税や加算税が課される可能性があります。
また、確定申告は納税の義務であると同時に、自身の所得を正しく申告する機会でもあります。正確な申告を行うことで、将来的に税務上のトラブルを避けることができ、安心して暗号資産取引を続けることができるでしょう。
確定申告が必要な人とは?
以下のいずれかに該当する方は、暗号資産の取引で得た利益について確定申告が必要となる可能性があります。
- 給与所得がある方で、暗号資産の利益を含む給与所得以外の所得の合計額が20万円を超える場合
- 給与所得がない方で、暗号資産の利益を含む所得の合計額が48万円を超える場合(基礎控除額)
- 上記以外にも、例えば年金収入がある方や副業で収入がある方など、確定申告が必要となる場合があります。
ご自身の状況が確定申告の対象となるかどうか不明な場合は、税務署や税理士に相談することをおすすめします。
課税対象となる暗号資産の取引とは?
一般的に、以下の取引によって得た利益は課税対象となります。
- 売却益(譲渡所得): 保有している暗号資産を売却して得た利益
- 交換益: ある暗号資産を別の暗号資産と交換して得た利益(例:ビットコインをイーサリアムに交換)
- 決済利用益: 保有している暗号資産を商品やサービスの購入に使用し、その時点での価格が取得価格を上回る場合の利益
- マイニング報酬: マイニングによって新たに獲得した暗号資産の取得時の時価
- ステーキング報酬: 暗号資産を預けて得た報酬の取得時の時価
- レンディング報酬: 保有している暗号資産を貸し付けて得た利息相当の報酬
- エアドロップ: 無償で配布された暗号資産の取得時の時価(条件によっては課税対象とならない場合もあります)
これらの取引によって得た利益は、原則として「雑所得」として扱われ、所得税の総合課税の対象となります。
暗号資産の所得金額の計算方法
暗号資産の所得金額は、以下の計算式で求められます。
所得金額 = 総収入金額(売却価額など) - 必要経費(取得費+手数料など)
ここで重要なのは、「取得費」と「必要経費」を正確に把握することです。
取得費とは?
取得費とは、暗号資産を購入するために支払った金額のことです。購入時の手数料なども含みます。複数の取引所で同じ暗号資産を購入している場合は、それぞれの購入価格と数量を記録しておく必要があります。
取得費の計算方法には、主に以下の2つがあります。
- 総平均法: 期首に保有していた暗号資産の取得費と、年中に取得した暗号資産の取得費の合計額を、それぞれの数量の合計で割って平均単価を算出し、売却または交換した数量に乗じて計算する方法。
- 移動平均法: 暗号資産を取得する都度、保有する暗号資産の平均単価を算出し直す方法。
継続して同じ計算方法を用いる必要があります。どちらの方法を採用するかは、最初に確定申告を行う際に選択し、その後は原則として変更できません。
必要経費とは?
必要経費とは、暗号資産の取引を行うために直接かかった費用のことです。例えば、以下のようなものが該当します。
- 取引所の手数料(売買手数料、送金手数料など)
- 取引に関する情報収集のための書籍代やセミナー参加費(事業所得として認められる場合に限る)
- 取引のために使用した通信費の一部(合理的な範囲に限る)
これらの費用は、領収書や取引履歴などで証明できるように保管しておく必要があります。
確定申告に必要な書類
暗号資産の確定申告に必要な主な書類は以下の通りです。
- 確定申告書B: 所得税の確定申告に使用する基本的な書類です。
- 暗号資産の取引履歴: 取引所からダウンロードできる年間取引報告書や、自身で記録した取引データなど。
- 取得費や必要経費を証明する書類: 購入時の取引明細、手数料の明細、領収書など。
- 本人確認書類: マイナンバーカード、運転免許証など。
- 銀行口座情報: 還付金を受け取る場合などに必要です。
取引所によっては、確定申告用の年間取引報告書をまとめて発行してくれる場合がありますので、利用している取引所の情報を確認しましょう。
確定申告の流れと注意点
確定申告は、以下の流れで行います。
- 取引履歴の準備: 各取引所から年間取引報告書などをダウンロードし、年間の取引状況を把握します。
- 所得金額の計算: 取引履歴に基づき、売却益や交換益などの所得金額を計算します。取得費の計算方法(総平均法または移動平均法)を間違えないように注意しましょう。
- 確定申告書の作成: 国税庁のウェブサイトの「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、画面の指示に従って簡単に作成できます。手書きで作成する場合は、税務署の窓口などで用紙を入手します。
- 確定申告書の提出: 作成した確定申告書を、税務署に提出します。提出方法は、以下の3つがあります。
- e-Taxによるオンライン提出: 自宅やオフィスからインターネットを通じて提出できます。マイナンバーカードとICカードリーダー、またはマイナンバー方式に対応したスマートフォンが必要です。
- 税務署への持参: 作成した確定申告書を、管轄の税務署の窓口に持参して提出します。
- 郵送: 作成した確定申告書を、管轄の税務署に郵送します。
- 納税: 確定申告によって納税が必要になった場合は、期日までに納税を行います。納税方法は、振込、クレジットカード納付、コンビニ納付などがあります。
確定申告時の注意点
- 取引データの正確性: 取引履歴に誤りがあると、所得金額の計算も誤ってしまう可能性があります。複数の取引所を利用している場合は、すべての取引履歴を正確に集計しましょう。
- 取得費の計算方法の選択と継続: 最初に選択した取得費の計算方法(総平均法または移動平均法)は、原則として変更できません。どちらの方法が有利になるかは、取引の状況によって異なります。
- 損益通算: 暗号資産の取引で損失が出た場合、その損失を他の雑所得(例えば、副業による所得など)と相殺することができます。これを損益通算といいます。損失が出た場合でも、確定申告を行うことで節税につながる可能性があります。
- 繰越控除: その年に控除しきれなかった損失は、翌年以降3年間にわたって繰り越して控除することができます。繰越控除を受けるためには、損失が発生した年も確定申告を行う必要があります。
- 税務署への相談: 不明な点や判断に迷う場合は、自己判断せずに税務署や税理士に相談することが重要です。税務署の無料相談窓口や、税理士の有料相談などを活用しましょう。
- 申告期限の厳守: 確定申告の期限は、原則として毎年2月16日から3月15日までです。期限を過ぎてしまうと、延滞税などが課される可能性がありますので、早めに準備を進めましょう。
確定申告をスムーズに行うためのヒント
- 日頃から取引記録を整理する: 年末になって慌てて取引履歴をまとめるのではなく、取引の都度、記録を残しておくようにしましょう。取引日時、取引所、売買または交換の種類、数量、価格、手数料などを記録しておくと、確定申告の際に役立ちます。
- 年間取引報告書を活用する: 多くの暗号資産取引所では、年間の取引をまとめた報告書を発行しています。これを活用することで、取引データの集計作業を大幅に効率化できます。
- 税務署のウェブサイトやパンフレットを確認する: 国税庁のウェブサイトでは、暗号資産の税金に関する情報や確定申告の手引きなどが公開されています。これらの情報を参考に、正確な知識を身につけましょう。
- 確定申告ソフトの利用を検討する: 確定申告ソフトを利用すると、画面の指示に従って簡単に申告書を作成できます。暗号資産の取引データに対応したソフトもありますので、検討してみると良いでしょう。
- 税理士に相談する: 税金の計算や申告手続きに不安がある場合は、専門家である税理士に相談することをおすすめします。特に、取引が複雑な場合や、多額の利益が出た場合は、税理士のサポートを受けることで、より正確で安心な申告が可能になります。
まとめ
暗号資産の確定申告は、一見複雑に思えるかもしれませんが、基本的なルールを理解し、しっかりと準備を行えば、誰でも適切に手続きを進めることができます。この記事で解説した注意点や対策を参考に、2025年の確定申告をスムーズに乗り切りましょう。
もし、確定申告についてさらに疑問点や不安な点がある場合は、税務署や税理士に遠慮なく相談してください。早めの準備と正確な知識が、安心して暗号資産取引を楽しむための第一歩です。


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